カラスの巣(その2)
今日、私が働いてる場所の敷地内で専門業者によりカラスの巣が撤去される予定です。
撤去時刻は16:00頃の予定です。近くにカラスの気配がしないことからカラスのお家は空家だとは思うのですが・・・。
そして16:00、専門業者がやってきたので、巣の撤去に私も一緒に立ち会うこととしました。
カラスの巣に近づくと業者さんは「ああ、これは卵か雛がいるね。ほら、あの遠くで見ているツガイのカラスが親ですよ。」とのこと。
私は念の為に確認をしました。「自治体からの許可証とかはお持ちですか?もし卵やヒナがいたらどうするのですか。」
業者さんからあっさりと許可証を提示され、言いにくそうに「殺処分です。」との回答を得ました…。
業者がハシゴを掛けて木に登ります。
すると猛スピードで先程のカラス2羽が突っ込んできます。ギャーギャーと叫び声を上げて業者を攻撃しまくります。
業者がカラスを熊手のようなもので叩き、追い払ってもカラスは物凄い形相で業者を襲い続けます。
そりゃそうですよね。私も自分の子が何者かに襲われそうになっていたら同じことをすると思います。
多分、死を恐れずに立ち向かうと思います。
カラスも同じなんですね・・・。
業者の声が聞こえます。「いるいる!3羽もいる!結構大きい!」
業者同士の会話だったのですが、私も話に割り込んでしまいました。「いるというのは卵ではなく、ヒナなんですよね?」業者からは、はい、ヒナがいます。との回答。
そして、業者はカラスの巣を木の枝ごとノコギリで切り落としました。
その過程で巣はひっくり返り、中にいたヒナは3羽とも7,8m下の地面に『ぼとっ』と落下、そして動きません。ただ、口を大きく開けて必死に呼吸をしていることはわかりました。人で言う『肩で息をする』ような状態です。
巣を落とされても親ガラスは決死の攻撃をやめません。近くにいた業者以外の人間にも攻撃をし始めました。
カラスを追い払いながら、業者の別の人がヒナに近づきます。
肩で息をするヒナを業者は何事もなかったかのように片手で掴み、厚めのビニール袋に入れようとします。
人間が主の世の中において、仕方がないことなのかもしれませんが、人を威嚇しただけでこの惨状です。
本当は威嚇もしていないのではないのでしょうか。少なくとも毎日この木の下を通っていた私は、カラスがいることにすら気づきませんでしたので。
カラス嫌いの人がそう言って巣を撤去させたのではないかと邪推してしまいます。
このカラスの一家が一体何をしたというのだ・・・。必死に子育てをしていただけではないのか・・・。
私は震える声を押し殺しながら、再度業者に聞きました。「ヒナでも殺処分なんですよね・・・?」やはり答えはかわらず「はい。」とのこと。
私「ヒナをいただけませんか?」
業者「え?構いませんけど・・・、何羽ですか?」
私「3羽とも。」
業者「ええ?3羽ともですか?わかりました。」
結果から言うと、3羽いたカラスのヒナのうち1羽は木から落ちた際に即死・・・。生き残った2羽を私が譲り受けることとなりました。
親カラスはその後、二度とその場に姿を現すことはありませんでした。
自然界(人間社会ですが。)で生きるはずのカラスが、人が関与することで殺される予定となり、そして人が関与することで生かされました。
私にはこの不合理が正解なのかはわかりません。ですが、私は『生→死→生』を駆け抜けたこのヒナたちを育てることを決意しました。
・・・と、決意はしたものの、高所から地面に叩きつけられたヒナたちは大怪我をしていると思います。
人間で言うところの全身打撲は絶対でしょう。それと1羽は翼と脚が変な形に曲がっているように見えます。
まずはすぐにヒナを家に連れて帰るために妻に連絡です。
「今すぐ車で来てくれ。」と私。
昨晩、妻にはカラスの話をしていたせいか、一切の詳細は聞かれず、「わかりました。」と。
さて、そんなこんなで、我が家には2羽のカラスが家族として迎え入れられました。
(そうしてこのブログ【Life with Crow】が出来上がってしまいました。)
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